『Origami Odyssey』を折る
その威力ある美。その味は大胆さをもっている。

Origami Odyssey
Tuttle Publishing
私にとっての「ちょっとした贅沢」は、季節の味覚とともにやってくる。
五月なら初がつお。 九月には、いちじくの実が熟し、モッツァレラチーズと合わせて口に運ぶと、これ以上ない幸福を感じる。私の知る数少ない九月の贅沢だ。
もうひとつ思い浮かぶのは、祖母の作る茶碗蒸し。 だしのきいたやわらかな味わいに、銀杏のほろ苦さがちょうどよく寄り添う。贅沢とは、豪華な食卓ではなく、心に残る一皿の記憶なのだと教えてくれる。
ただ一つ、どうしても馴染めない味がある。牡蠣だ。 採れたての生牡蠣は海水の味と貝の食感ばかりが口に残る。焼いてみても、特別な感動はない。むしろあれは「不味い不味い」と言いながら食べるのが正しい楽しみ方なのではないかとさえ思う。
柳宗悦「失われんとする一朝鮮建築の為に」(『改造』1922年9月号)
「光化門よ、光化門よ、お前の命がもう旦夕(たんせき)に迫ろうとしている。お前が嘗(かつ)てこの世にいたといふ記憶が、冷たい忘却の中に葬り去られようとしている。どうしたらいいのであるか。私は想い惑っている。醜い槌(つち)や無情な槌がお前の躯(からだ)を少しづつ破戒し始める日はもう遠くないのだ。このことを考えて胸を痛めている人は多いにちがひない。だけれども誰もお前を救ける事は出来ないのだ。不幸にも救け得る人はお前の事を悲しんでいる人ではないのだ。 まだ世は矛盾時代だ。門の前に佇んで仰ぎ見る時、誰もその威力ある美を否み得るものはないのだ。併(しか)し今お前を死から救おうとする者は反逆の罪に問われるのだ。お前を熟知している者は発言の自由を得ないのだ。」
本の感想
「Origami Odyssey」は、Peter Engel氏の作品です。数十年にわたる折り紙デザイン哲学の変化と成長が詰まった、折り紙を芸術の域にまで高めるEngel氏の哲学が詰まった作品となっています。