『BUTTER』を折る

料理を通じて描かれる家族の絆と人間関係の複雑さ。柚木麻子の新作小説。

折り紙作品 1
折り紙作品 2
折り紙作品 3
本の表紙

BUTTER

柚木麻子

新潮社

本の感想

“文句なく面白い。料理へのこだわりが凄い。”

というAmazonのレビューで買ってみた。

『BUTTER』は、東京拘置所に拘束されている女囚と面会を続ける女性編集者の物語だ。女囚がバターを使った料理や菓子にこだわりがあり、編集者もまた彼女の心に近づくためにバターを使った料理を自ら作り始める。

この設定が実に興味深い。拘置所という閉鎖的な空間と、バターの香りや味が持つ温かさの対比が印象的だ。女囚の心の奥に眠る記憶や感情が、バターを使った料理を通じて少しずつ解き放たれていく様子が美しく描かれている。

また、作中に出てくる食べ物の描写が良くて、どんどんと食欲が湧いてくるような作品だった。単なる料理の説明ではなく、その味や香り、食感までが鮮明に伝わってきて、思わずお腹が鳴る。

料理が人と人を繋ぐ力、記憶を呼び起こす力、心を癒す力が、この作品を通じて深く感じられる。現代文学としても、料理小説としても、どちらも満足できる一冊だ。